日本の医療の特徴として、国民皆保険制度があります。
1961年に開始された制度です。
これによって全ての国民が医療保険に加入して診療を受けることができるようになりました。
医療保険
医療保険とは、病気や怪我をした時に医療保険の保険者が決められた医療費を支払う制度です。
この保険者とは、保険事業の運営のために保険料を徴収したり、保険給付などを行う運営主体のことで、保険の種類によって異なります。
医療保険の種類
医療保険制度は大きく「社会保険(社保)」、「国民健康保険(国保)」に分かれています。
一つずつ見ていこうと思います。
社会保険(社保)
社保は、職場に勤めている人が対象とした職域保険で被用者保険とも呼ばれます。
次のような保険の種類があります。
- 全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)
- 組合管掌健康保険
- 日雇特例被保険者の保険
- 各種共済組合保険
- 船員保険
- 自衛官等の療養の給付
健康保険
社保のうち健康保険は民間企業の従業員が加入する医療保険です。
協会けんぽは健康保険組合を結成するほど従業員が多くない中小企業の従業員を対象に全国健康保険組合が運営しています。
組合管掌健康保険は大企業や同業種同地域の事業所が健康保険組合を結成して運営しています。
事業所に日々雇われている日雇労働者は、日雇特例被保険者として健康保険の対象となり、この場合、保険者は全国健康保険協会です。
共済組合
共済組合は公務員や公共企業体の職員を対象とする制度です。
- 国家公務員共済組合 → 国家公務員が対象
- 地方公務員共済組合 → 地方公務員が対象
- 警察共済組合 → 警察職員が対象
- 日本私立学校振興共済事業団 → 学校教職員を対象
船員保険
船員保険は、船員を対象とする医療制度で、平成22年1月より新制度がスタートしました。
保険者は全国健康保険協会です。
職務上の疾病には労災(労働者災害補償保険)が適応されます。
改正前に支給事由の生じた給付は旧船員保険法基づきます。
自衛官等の療養の給付は自衛官や防衛大学校、防衛医科大学校の学生、訓練のために召集を受けている退職自衛官が対象となる保険です。
保険者は防衛省です。
適応は本人のみで、家族は国家公務員の防衛省共済組合より給付されます。
国民健康保険(国保)
国保の対象は、自営業や個人事業主(社保の対象者以外)です。
地域保険とも呼ばれており、以下のような保険があります。
- 市町村国民健康保険
- 国民健康保険組合
市町村国民健康保険
市町村国民健康保険は、自営業者、農業、漁業事業者などと社会保険の退職者を対象とする保険です。
保険者は市区町村や都道府県です。
国民健康保険組合
自営業者でも開業医、開局薬剤師などは職業別に国保組合を組織して独自に運営しています。
保険の種類の判別
保険の種類の判別は保険者番号で確認します。
社保は法律により制定された制度ごとの法別番号2桁、都道府県ごとに定められた都道府県番号2桁、その保険独自に定められた保険者番号3桁、コンピューターによる検証番号1桁の合計8桁からなります。
国保は、法別番号はなく、都道府県番号2桁、保険者番号3桁、コンピュータによる検証番号1桁の合計6桁からなります。
社保の各々の法的番号は下図のとおりです。
医療保険制度の概要
前期高齢者医療制度
対象は前期高齢者(65歳以上75歳未満)であり、
国保と社保の間の医療費負担を調整するための制度です。
国保の加入者には会社などを退職した人が多く、高齢者の割合が高いため必然的に医療費の支出が多く、国保の財政圧迫の原因となっています。
このような国保の負担を軽くするために、現役世代が多い社保が財政支援を行います。
前期高齢者医療制度は医療費負担の不均衡を調節す流ために設けられた制度となります。
そのため、65歳になり前期高齢者となっても引き続き、国保もしくは社保に加入し続けます。
また、70歳以上、75歳未満には高齢受給者として高齢受給者証が交付されます。
高齢受給者証明書とは、一部負担金の割合を示している証明書のことです。
医療機関では必ず、保険証と一緒に提示する必要があります。
後期高齢者医療制度
後期高齢者医療制度は国保、社保とは関係なく、75歳以上の後期高齢者を対象とした独立した保険制度です。
後期高齢者医療制度とは、高齢者の暮らしに配慮室治療が行われる仕組みを導入して、在宅医療の充実など高齢者の生活を支える医療を目指すもので、長寿医療制度とも呼ばれます。
対象は75歳以上の後期高齢者です。ただし、一定の障害がある人は65歳以上から対象となります。
対象者には75歳の誕生日までに後期高齢者医療被保険者証が交付されます。法別番号は39です。
75歳の誕生日から適応されます。
上記の例は、社保に加入している74歳の夫と夫の被扶養者である73歳の妻の場合です。
夫が75歳の誕生日を迎え、後期高齢者となると、妻は自信が75歳の誕生日を迎えるまでの間、基本的に市区町村の国保に移行することとなります。そして、妻は自信が75歳の誕生日を迎えると後期高齢者医療制度に移行します。
この制度の運営主体は、都道府県の市区町村が加入する「広域連合」です。
この広域連合で保険料を決定し、医療機関に医療の給付などの支給を行い、市区町村が保険証の交付や保険料の徴収を行います。
後期高齢者医療制度の医療等に要する費用は、患者の自己負担額を除いた医療費のうち公費が約5割、後期高齢者支援金が約4割、後期高齢者の保険料で約1割で賄われています。
特例退職被保険者制度
健康保険組合のうち一定の条件を満たすものは厚生労働大臣の認可を受け、特定健康保険組合となることができます。
特例退職被保険者制度は、一定期間健康保険組合に加入していた退職者が後期高齢者医療制度に加入するまでの間、特定健康保険組合が、引き続き、現役組合員と同様の保険給付を行う制度です。
対象は75歳未満、老年(退職)年金受給者、または受給資格者で社保扱い、法別番号は63です。
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