性教育。
皆様何歳から教えられたでしょうか?
小学生、中学生、高校生…?
では誰から教わりましたか?
医者ですか?助産師?
医者であれば、産婦人科の医師でしょうか?それとも泌尿器科?小児科??
誰が誰に教えるかによって、教わる内容は様々で異なってくるかと思います。
医療従事者として、きちんとした性についての知識を教えられるようにすることも薬剤師としては重要ではないかと思い、また、息子をもつ親として、子どもにいつ、どういった形で、かつどこまで教えるのか・・・いろいろと試行錯誤しながらここに知識をまとめていこうと思います。
病院薬剤師として、産婦人科病棟に勤務していた経験から、まずは産婦人科目線から薬剤師として患者へ接するうえで知っておくほうがいいと思うことの話もしていきたいと思います。
はじめに
産婦人科の医師の仕事は?
妊娠や出産などを行う「産科」、
子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮がんや卵巣がんなどの良性・悪性腫瘍や人工妊娠中絶術などをあつかう「婦人科」、
そして、不妊・月経異常、思春期、更年期の体の相談や治療などを請け負う「生殖内分泌」という分野、
性感染症予防治療や避妊指導などの「性教育」が産婦人科の大きな仕事となっています。
いわゆる、ゆりかごから墓場まで、女性の一生をお手伝いする仕事が産婦人科医の仕事と言われています。
女性の一生
女性の一生は、
小児期⇒思春期⇒成熟期⇒更年期⇒老年期
となっています。
女性ホルモン(エストロゲン)とともに一生を終えていくのが女性のライフスタイルかと思います。
それぞれの時期で相談内容やかかりやすい疾病の内容が変化します。
今回まとめていく性教育は、ホルモンの分泌が盛んになる思春期からそれがプラトーに達する成熟期が中心となります。しかし、もちろん更年期も関わってきます。
早期に男女ともに正しい性への知識、教育がされることが自分自身や相手を大切にすることにつながると思います。
命の誕生について
いのち=生命
まず出会いからして奇跡です。
彼氏とである、彼女とであう。配偶者と出会う。なぜこの人なんだろう?と思いますよね。
何億の人がいる中でたった一人の人と出会うわけですから、この段階でとても奇跡的なことですね。
そこから関係が発展して、妊娠をします。それで家族が増えていくわけです。
まずここが奇跡のストーリーのスタートとなるわけです。
受精とは
卵子。体の中で一番大きな細胞です。0.1mmほどあります。
この卵子から私たちはスタートします。
卵子の寿命はだいたい数時間から24時間くらいと言われています。
生まれたときに原子卵胞といって200万個の原子卵胞があるのですが、それがだんだん少なくなっていきます。思春期にはだいたい30~40万個になってしまいます。
毎月1000個ずつ減っていって、毎日30~40個減っていってます。
その中から選ばれて、ひとつが我々の体となりました。
それに比べると、精子は、いくらでも作ることができます。
精子は1回の射精で5000~2億が射精されるといわれています。
寿命は卵子よりも長く、数時間のものもありますが、3~7日くらいは生きていられます。
そして、1秒間に3~4mmくらい動きます。
射精後、精子は子宮の入り口から卵管まで行くんですが、その距離が大体20cm程度。
計算すると、80分で卵子に到達する・・・
けれでも、子宮頚部に到達することができる精子がだいたい1000個。
卵巣まで行くのは、だいたい100個。
射精した精子の99%は受精する前に死滅してしまうという、これはすごく奇跡的な出会いですね。
何億という精子のなかから一番強い、たった一つの精子だけが受精することができます。
精子の一つが受精すると、受精膜というのが出てきて、2番目の精子は中に入ることができません。
これはすごい確率ですね。
ここまででも とても奇跡ですね。
そして無事に受精すると分割(卵割)が始まります。
着床とは
生理が終わって2週間くらいで排卵があります。
よく、排卵は左と右交互に行われると思われている方が多いかと思いますが、そうでもないようです。
卵胞が2cmくらいに大きくなったところで排卵して、卵管の先の部分が卵をつかんでくれます。
その時に精子(King of 精子)がやってきて、美辞にそこで受精をすると、卵割を始めながら、12,13cmの卵管を通って、ふわふわの子宮内膜までたどり着いて着床します。
ここでたとえば、ちょっと引っかかって卵管で着床してしまった場合、これが、子宮外妊娠といいます。そうするとある程度までは大きくなれますが、卵管は細いチューブみたいな組織ですので、ある程度まで大きくなると、バンッと破裂してしまい大出血となってしまいます。
そうすると、赤ちゃんが育たないばかりか、母体の命の危険もあります。
そういったこともクリアして、子宮内膜に着床すると、どんどん育っていきます。
もし、その子宮内膜が薄くて、受精卵がくっつかない場合は、そのまま流産になります。
着床の場所が真ん中から上あたりだといいですが、少し受精卵が下にずれて、子宮頚幹部で妊娠した場合は子宮頚管妊娠といって、途中までは育ちますが、持ちこたえられなくなって大出血を起こしてしましまい母体の命が危険にさらされます。
そういったこともクリアして、子どもが育ってきます。
胎児の発育
6週で胎児の大きさは5~7mmくらい、8週になると約1.5cm、12週になると子供らしくなって約5cmの大きさになります。21週で約25cmで生まれるときが50cmくらいなのでちょうど半分くらいの大きさになります。ここまで来ると安心ですね。
基礎体温表です。
最初の低温期のところが卵胞期といって、卵を育てる時期です。
その後体温が少し下がるとそこで排卵が起こります。
その後高温期にはいります。黄体ホルモンが分泌されて、子宮の内膜が分厚くなって、受精して分割した受精卵を待ち構えているような状態です。
このまま妊娠が成立すると、この高温期が続いて次の生理は来ません。
残念ながら妊娠が不成立だった場合には子宮内膜が剥がれ落ちて、生理が来て体温は再び低温期へ戻ります。
今回生理がこないな~あれ?妊娠の可能性もあるかもしれないからと、検査してプラスが出たころには、妊娠の周期でいうと5週に入っています。
産婦人科を受診して、経腟超音波で胎嚢という1cmくらいの袋が見えます。ここで、子宮外妊娠ではなかったとひと段階クリアですね。
そして、もう2週間くらいたつとその袋の中に小さい塊が見えてきます。よく見るとその真ん中に心臓が動いている動きが見えます。あ、流産してないなと、ここでもひと段階クリアです。
そしてもう2,3週みていると5cmくらいの大きさになって赤ちゃんの頭や体がよく見えてきます。
妊娠期間の数え方
12週を超えると、お腹からの超音波で見ることができるようになります。
現在は3Dとか4Dとかでより鮮明に赤ちゃんの姿を見ることもできます。しかし、簡単にとれるわけではなく、赤ちゃんの向きや暴れる子によっては全然いい画像が見れないことも多くあります。
妊娠期間の数え方については下の図を見てください。
期間の経過は思った以上にあっという間です。日本では21週までは中絶することができます。
それを過ぎるともう産むしかなくなってしまいます。
出産について
37週から41週までを正期産といいます。
破水が先の方もいれば、陣痛が先の方もいます。陣痛は痛みが10分おきにくることでそうなった場合には病院に連絡or病院へ向かうこととなります。
子宮の入り口が10cm開くと全開といって、力を入れて赤ちゃんを産んでいただくこととなります。
双子や逆子など、経腟分娩ではリスクがある場合には帝王切開で出産することとなります。
途中で、胎盤が剥がれたり、へその緒にまかれてしまったり、羊水が少なくなったりと様々なトラブルが起きることもある中で、何事もなく、経腟分娩できるということもとても奇跡的なことです。
そして、赤ちゃんというのはとてもすごいもので、教えてもいないのに、4回転して産道を通り出てきます。
回転が足りなかったり、頭の向きが違っていたりすれば途中で止まってしまって、場合によっては緊急帝王切開となることもしばしばあるそうです。
分娩曲線と三要素
助産師さんがつけてくれる、分娩の経過を表す曲線のことをフリードマン曲線といいます。
縦が子宮の入り口の開き具合、横は分娩にかかった時間です。
初産婦だと11~15時間くらい、経産婦だとその半分で6~8時間くらいかかるといわれています。
初産婦が30時間、1日以上超えたり、経産婦が15時間以上超えたりすると、「遷延分娩(せんえんぶんべん)」といって、時間が長いと何か問題があるんじゃないか、陣痛は弱くないかということで、医師の手伝いが必要となってくることがあります。
分娩の内容を決めるのが、分娩の三要素です。
産道:背の小さい方だと骨盤が小さいことがあるので頭が引っかかって出てこれないという場合があります。肥満の方だと、脂肪が入り口についていてなかなか出てきにくくなるという場合もあります。
娩出物:一番は赤ちゃんが元気かどうか、ちゃんと回線しているかどうか。それに胎盤がしっかりついているか、途中ではがれてしまっていないか。臍は巻いていないか。
娩出力:陣痛の強度です。疲れると陣痛が弱くなり、押し出す力が弱くなってしまいます。
こういった場合に応じて医療従事者が助けを出すこともあります。
誕生
産婦人科医は「何千件立ち会っても一つとして同じ誕生はない。」といいます。
泣き方、顔つき、皮膚の色、紙の毛の生え方。出て来方。
赤ちゃんは生まれてきた瞬間、肺呼吸にならなければなりません。
それまでは羊水の中にふわふわ浮いていて、お母さんのへその緒から栄養をもらっていた子が、急に独り立ちをしなければなりません。
大体32週から、体動のほかにピクピクという動きを感じられる方もいるかもしれません。これは痙攣しているのではなく、実は横隔膜の運動を赤ちゃんが始めていて、生まれてすぐに肺呼吸ができるように準備をしているんだそうです。
これも不思議ですが、取り出された赤ちゃんのへその緒を切って、お母さんのおなかの上にのせると、這い上がって、お母さんのおっぱいを探して吸い付くんだそうです。そんなこと、誰も教えていないのですが、これも持って生まれた生きる力なんでしょうか。
命の生まれる瞬間はすべて感動的です。
すべてが素晴らしいドラマです。
どういった経緯で生まれてきたのか、日本は母子手帳にすべて記載されています。
自身のものを見たことがない方はこの機会に見てみるのもいいかもしれませんね。
ひとりひとりが宝物
自分から順番にさかのぼってください。
まず、父、母、祖父、祖母がいますね。
10代さかのぼると24人。
15代さかのぼると32768人。
20代さかのぼると100万人。
この中の一人でもいなかったら?
今の自分は存在しません。
とても奇跡的ですね。
卵子、精子から話をしても、我々が存在することがとても奇跡的なことがわかるかと思います。
自分を大切に。自分はとても素晴らしい存在です。
自己効力感、自尊感情がないと、これからお話する性教育、特に性感染症の予防にはつながりません。
相手を思う気持ちは大切です。
私たち、ひとりひとりが宝物なんです。
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