経口避妊薬(Oral Contraceptive:OC)=ピル
ピルは錠剤という意味ですが、一般にピルというと経口避妊薬の意味として使われています。
現在たくさんの種類のピルがでています。
医師はこのたくさんのピルの中からどういった理由で一つを決めて処方しているのでしょうか?
避妊機序
OCは卵胞ホルモンと黄体ホルモンが入っています。
服用後、中枢性にネガティブフィードバックをかけることで、排卵を抑制します。
また、直接子宮内膜を変化させ(薄くする)、受精卵を着床しにくくします。
そして、子宮頚管粘液を変化させ、精子を子宮に入りにくくします。
この3つで避妊効果を表しています。
副効用
OCには避妊効果以外にも様々な効果があります。
よって、避妊以外の目的でも服用されることがあります。
- 良性乳房疾患↓
- ニキビ・多毛症↓
- 卵巣がん・卵巣腫瘍のリスク↓
- 子宮外妊娠↓
- 子宮内膜症↓
- 骨髄内炎症性疾患↓
- 月経不順↓
- 鉄欠乏性貧血↓(出血量↓)
- 月経困難症↓(月経痛↓)
- 月経前症候群(PMS)↓
- 月経過多症↓
服用目的
ピルの服用目的として多いものは、実は月経困難症や月経前症候群が多く、次いで避妊というような順番であることが多いと言われています。
ピルのニーズ
ライフステージ毎のピルのニーズについてまとめました。
10代
- 月経痛
- 月経不順
- 過多月経
- 避妊
- 情緒不安定
- ニキビ
- 多毛
20代
- 避妊
- 月経不順
- PMS
- 排卵痛
- 過食
- ニキビ
- 肌荒れ
- 子宮内膜症
30代
- PMS
- 子宮内膜症
- 避妊
- 月経周期の安定
- メンタルと体調の安定
- プレ更年期
40代
- 月経周期の安定
- メンタルと体調の安定
- プレ更年期
- 美容
- 抗うつ
- 避妊
ピルの種類と使い分け
E:卵胞ホルモン + P:黄体ホルモン
エチニルエストラジオール(EE)
注意:以下は2014年1月時点での情報
中用量ピル(EE:50μg以上)
NG:ノルゲストレル(プラノバール)
低用量ピル(EE:30~35μg)
NET:ノルエチステロン(一相性:オーソM(21)、ルナベル(21))
(三相性:シンフェーズ(28))
LNG:レボノルゲルゲストレル(三相性:ラベンフィーユ(21,28)、アンジュ(21、28)、
トリキュラー(21,28)
※月経周期をきちんとしたい、不正出血をとめたいという場合は、内膜を安定化させる作用があるので、レボノルゲルゲストレルを含むピルを使用することがあります。
DET:デソゲストレル(一相性:マーベロン(21,28)、ファボワール(21,28)
※デソゲストレルは男性ホルモン作用がありませんので、生理も順調にしたい、避妊もしたい、でも、ニキビも治したいというような方に向いているお薬と言えます。
※月経困難症がひどい、月経前症候群がひどいという場合にはなるべくホルモンのアップダウンをさせない方がいいと考えて、一相性のノルエチステロンもしくは、デソゲストレルを含むピルを使用することがあります。
超低用量ピル(EE:20μg)
DSPR:トロスピレノン(ヤーズ(28))
結局、どれがいいの?と思われるかと思いますが、飲んでみて自分に合うものがいい!ということになります。ファッションのように合っているかどうかというところで判断していただいたらいいかと思います。
ピルの種類とホルモン量
一相性 黄体ホルモンと卵胞ホルモンの配合非が21日間一定であり、日本では第一、第三世代が入手可能です。
三相性 A:卵胞ホルモンは21日間均一ですが、黄体ホルモンが7日毎に増量していく配合非が変化していくものです。日本では第一世代の入手が可能です。
三相性 B:黄体・卵胞ホルモンの配合非が両者ともに変化しているもので、日本では第二世代が入手可能です。生理学的なホルモンに似たように作られているものです。
ピルのリスク
10万人の女性のうち、1年間で死亡するリスクを下記にあらわしました。
健康な非喫煙者が受けるピルのリスクを1とすると、
- 家庭内での事故・・・3
- サッカー・・・4
- 妊娠・出産(英国)・・・6
- 交通事故・・・8
- スキューバダイビング・・・22
- 喫煙・・・167
- アフリカなどの途上国での妊娠・出産・・・1000以上
となります。実はピルはそれほどリスクが高くないというようなデータとなっています。
うまくピルと付き合っていけば、とても良い薬であると言えます。
体内水分量への影響について
超低用量ピル(ヤーズ)の文献データですが、体内の水分量を減らしてしまうというデータがあります。
ピルは黄体ホルモンの影響でむくみやすい性質がありますが、ヤーズはむくみやすい女性にも重宝するような薬です。また、超低用量ピルなので吐き気等の副作用が出にくいので使いやすいピルであると言われています。
しかし、体内水分量の減少により、死亡例が出てしまったために、十分に水分を取る等の対策が必要であると言われるようになりました。
今は、お薬をもらう際に名刺サイズの小さいカード(患者携帯カード)をお渡ししています。
上記のような症状が現れたら医師に相談する等の注意事項が記載されていますので、常に財布などに携帯しておき、医療機関受診の際にはそのカードを掲示するようにしてください。
ヤーズだけでなく他の低用量ピルでも同じような副作用が出る恐れはあります。
しかし、この副作用を必要以上に怖がって、ピルを飲まない!!ということは正直もったいないとおもっています。常に対策を意識しながら、ピルと上手に付き合っていき、不快な症状の改善や避妊などの目的を達成させましょう。
上手に付き合っていくためにも、薬剤師・医師とのコミュニケーションが大切です。わからないことや不安を是非相談してみてください。
血栓症の注意すべき副作用
- 下肢の急激な疼痛、浮腫
- 突然の息切れ、胸痛
- 激しい頭痛、四肢の脱力、麻痺
- 構語障害(言葉が出づらい)
- 急性視力障害(目が見えづらい) 等
ピルの効用と副作用
ベネフィット
患者サイド
- 避妊効果
- 周期の調節
- 月経痛の調節
- 月経痛の緩和
- 月経血量の減少
- アクネ、多毛症の改善
医師的サイド
- 子宮内膜症の治療
- がん・腫瘍の予防
- 卵巣がん・子宮体がんの予防
- 骨盤内感染症の予防
- 卵巣嚢腫・乳腺腺腫の予防
リスク
患者サイド
- 悪心・嘔吐
- 体重増加
医師的サイド
- 血栓症
- 高血圧
ピルのメリットを正しく理解し、利用していくことが10代から40代の女性のQOLを改善していくと思っています。
望まない妊娠をしないようにしっかりと避妊しましょう。
避妊が不十分であると思われたら、迷わず緊急避妊を行いましょう。
中絶を全く否定するわけにはいきません。
しかし、中絶の反復は絶対に避けるべきです。
そのために、薬剤師含む医療従事者は患者様に指導が必要であり、状況に応じてピルやIUDを勧めることも必要であると考えます。
緊急避妊法(アフターピル)
2021年の2月にやっと認可されました。
緊急避妊ホットライン:03-3235-2638
レイプされた等、緊急事態で、妊娠を不正擬態場合に、72時間(3日)以内に緊急避妊ピル(0.75mgレボノルゲストレル:LNG)服用してください。
副作用は吐き気、頭痛などが一般的に出ますが、危険な副作用がなく84%妊娠を防ぐことができると言われています。
昔はYuzpe法という中用量ピルを服用して避妊する方法がとられていましたが、今は緊急避妊ピルLevonorgestrel法(ノルレボ)の一択です。
72時間以内にノルレボ錠を2錠1回飲みます。
しかし、安易に使用できるほど安価な薬ではありません。それと同時に命の重さも感じていただきたいと思います。
人工妊娠中絶薬
WHO推奨の人工妊娠中絶薬 mifepristone(RU486)です。
1980年代にフランスで合成したプロゲステロン受容体拮抗薬です。
妊娠早期にプロスタグランジンE1アナログ(misoprostol)と併用すると、完全流産率が98%となります。
1988年フランスで初承認となり、同年中国でも承認。2013年には57か国で承認されています。
日本は日本産婦人科医会検討委員会で検討中です。
使用方法・作用機序
様々な使用方法があるのですが、一部抜粋します。
<フランス処方>
mifepristone(RU486);600mg day1
misoprostol;400μg day2 or day3
妊娠49日まで可能。
最初のフォロー;day10~day14
受診回数は3回以上
妊娠継続に必要なプロゲステロンを遮断します。
統計による現状
2013年に日本家族協会によるWEBアンケートでの結果で、性交渉未経験者の割合は20代で男性42%、女性21%、30代で男性10%、女性7%であり、1か月性交渉がなかったと回答した割合は、男性が31%、女性は34%でした。
この結果を踏まえて、性、セックスに対して無関心である、草食、絶食が増えたということを表しているのではないでしょうか。
昔は、三大欲求と言えば食欲、睡眠欲、性欲と言われていましたが、現在では、
1:食欲 2:睡眠欲 3:メディア欲 、その後が性欲
と言われている現状です。
これは、危険を回避するという心理が働いている・・・育つときに「危ないからやめなさい」という親が子に危険を回避させているという安全第一というのが日本の国にはあるのかなと思いますが、守られ過ぎているために極端な考え(「そんなに性感染症で命の危険があるのならばしなければいいじゃないか」等)、そういった発想になってしまっているのではないでしょうか。これはとても残念な事態に思えてなりません。
次回は
次回、性感染症についてまとめたいと思います。
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