骨粗鬆症は単なる骨の老化現象ではなく、骨の病的な老化現象です。
予防と早期からの治療が重要となります。
では、治療目的と治療方法について学んでいきましょう。
骨粗鬆症の治療目的
骨粗鬆症になっても、骨強度が低下しただけでは、自覚症状はほとんど現れません。
しかし、治療せず、放置していると、合併症である骨折を引き起こす危険性が高まります。
骨折によって疼痛が発生する。
椎体骨折では、背中や腰が曲がって内臓を圧迫することで、逆流性食道炎などの消化器疾患の合併や心肺機能の低下来たし、大腿骨遠位部骨折では、歩行が困難になり、そのまま寝たきりにつながることもあります。
そうして、QOLの低下(生活の質が低下)します。
よって、骨粗鬆症では、
- 骨折を予防する
- QOLを維持、向上すること
が、治療の目的となります。
骨粗鬆症の治療方法
骨粗鬆症の治療は薬物療法が中心となります。
骨粗鬆症の危険因子として日常生活が大きく関わっているため、薬物治療と同時に食事療法、運動療法によって生活習慣を改善して骨強度を高めることも大切です。
骨粗鬆症は薬物治療によって骨折のリスク低下を目指せることから、早期から薬物治療を開始することが大切です。
そのため、骨粗鬆症では、診断されたらすぐに薬物治療が開始されます。
また、骨粗鬆症と診断されていなくても、
大腿骨近位部骨折の家族歴を有する
年齢が高い
喫煙量が多い
アルコール量が多い場合
など、骨折の危険性が高い場合には、薬物治療の開始が検討されます。
薬物治療の開始基準
最初に大腿骨の近位部、または椎体の脆弱性骨折の有無について確認します。
女性では閉経以降、男性では50歳以降に大腿骨近位部、または椎体に脆弱性骨折がある場合には骨量測定の結果を問わず、薬物治療を開始します。
大腿骨近位部骨折、または椎体骨折がない場合でも他の部位において脆弱性骨折があり、骨密度値がYAMの80%未満および、骨折がなくても、骨密度値がYAMの70%未満の場合は薬物治療を開始します。
脆弱性骨折がなくても、骨密度値がYAMの70%以上80%未満の場合であって、FRAXの10年間の骨折確率(主要骨粗鬆症性骨折)が15%以上である場合、および、大腿骨近位部骨折の家族歴を有する場合は薬物治療の開始を検討します。
FRAXとは?
FRAX(フラックス)とは、WHO(世界保険機関)が開発した骨折リスク評価ツール(fracture Risk Assessment Tool)のことで、インターネット上のホームページにアクセスすると利用できます。
FRAXでは、年齢、既存骨折、喫煙などの骨折危険因子の有無などに関する12項目を入力と主要な骨粗鬆症性骨折(椎体、大腿骨近位部、上腕骨、橈骨の骨折)および、大腿骨近位部骨折単独について今後10年間に発生する確率が算出されます。
薬物治療の開始基準では、主要骨粗鬆症性骨折の骨折確率が15パーセントであれば薬物治療のに開始を検討することになっています。
ただし、75歳以上の高齢者ではほとんど全ての女性が骨折確率25%以上となってしまうことから、この条件は75歳未満で適用となります。
なお、この薬物治療の開始基準は、原発性骨粗鬆症に関するものであるため、FRAXの項目のうち糖質コルチコイド、関節リウマチ、続発性骨粗鬆症の項目が全てないことに限って適用されます。
次は、薬物治療について学んでいこうと思います。
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