新型コロナ感染症の治療薬(軽症の場合)

医療・薬

新型コロナ感染症治療薬をまとめたいと思います。

軽症の場合に使用される薬剤について、2022年1月時点で日本が使用できるのは

  • ラゲブリオ
  • ラナプリーブ
  • ゼビュテイ

この3剤があります。

軽症とは?

新型コロナウイルス感染症診療の手引き 第6.1版より

軽症の臨床症状は呼吸器症状なし、または咳のみで呼吸困難なし。肺炎の所見もなし。

酸素飽和度 SpO2 96%以上

(新型コロナウイルス感染症(COIVD19)診療の手引き 第6.1版から引用)

新型コロナ感染症の経過には2つのフェーズがあります。

  • 新型コロナウイルスの増殖期
    発症日をピークにして3週間かけて感染が治まります。この時はウイルスの増殖による症状が主体となります。
  • 免疫による過剰な炎症反応が主体の時期
    発症日から7日前後するとウイルスにより私たちの体で免疫反応が起こったことによる過剰な炎症が主体となる時期が来ます。様々な後遺症や肺炎の重症化はこの過剰な炎症によるものだといわれています。

よって、新型コロナ感染症には時期によって異なる治療薬が必要となるのです。

一般に軽症、発症早期の方にはウイルスの増殖を抑える薬

中等度Ⅱや重症で発症後期の場合には炎症を抑える薬が重要となります。

さらに、このうち、重症化リスクのある人(重症化しやすい人)が米国CDCの研究でわかっており、当てはまる人は早期にウイルスの増殖を抑える薬を使うことで重症化を予防できる可能性が高くなるとのことです。

重症化リスクのある人の特徴

  • 65歳以上
  • 悪性腫瘍(がん)罹患者
  • 長期間喫煙して、息切れがある(COPD)
  • 腎臓が悪い(腎不全、腎機能障害あり)
  • 糖尿病
  • 高血圧
  • 悪玉コレステロール(LDL)が高い、中性脂肪の高い脂質異常症
  • 肥満(BMI30以上)
  • 喫煙者
  • 移植後で免疫不全の人
  • 妊娠後期

特にカシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ®)、ソトロビマブ(ゼビュディ®)、モルヌピラビル(ラゲブリオ®)は、それぞれの臨床試験で重症化リスク因子を有する患者を対象としているため、実際に使用する際にもこのリスクがあるかどうかが関係します。(薬剤によって少し上記とは異なっているところがあるので、それは薬剤の添付文書等を参考にしてください)

新型コロナ感染症の軽症で使用する治療薬の特徴とは

カシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ®)

中外製薬のHPより参照

ロナプリーブは2種類の抗体が入った注射薬です。重症化予防発症予防の効果があります。

ロナプリーブの添付文書はこちら

罹患患者への重症化予防に投与する場合には、先ほどの重症化リスク因子を有していること、また酸素投与を必要としない(軽症・中等症Ⅰ)患者を対象とします。(12歳以上かつ体重40kg以上)

発症後速やかに1回点滴静注します。

症状が出てから7日以内の患者で、効果があるという臨床結果がでています。よって、早期に投与することが重要です。

また、発症抑制効果の目的で使用する場合には濃厚接触者、無症状のウイルス保有者で重症化リスクを有する場合に限られています。

だれでも濃厚接触者が投与できるわけではないんです。

濃厚接触でPCR-の人へ投与した場合に発症リスクが81%抑制、無症状のPCR+の人へ投与した場合には発症リスクが31%減少したという臨床結果があります。

主な副作用は注射部位の反応や急性輸液反応(薬剤投与中の過敏反応: 0.2%)・アナフィラキシー(非常にまれ)。頻度としては多くなく、比較的安全性の高い薬剤といえますね。

また、2022年1月から流行している『オミクロン株』には中和効果が減弱するとのことで、投与は推奨されていないようです。

ソトロビマブ(ゼビュディ®)

gskのHPより引用

添付文書はこちら

ゼビュディ®も新型コロナウイルスの中和抗体です。1回点滴静注で効果を発揮します。

対象患者は、

酸素投与を要しない(軽症・中等症Ⅰ)で12歳以上かつ40kg以上の方

重症化リスク因子を有する方

こちらも症状発現から1週間程度までを目安に投与が必要です。

主な副反応は発疹(2%)と下痢(1%)とありますが、ほとんどが軽度~中等度なもののようです。

ただし、本剤は2022年1月現在、安定的な供給が難しいため、一般流通は行わず、対象となる患者が発生した場合に無償で譲渡されるシステムになっています。そのため、2022年1月時点では主に入院患者が対象になっています。(厚生労働省 新型コロナウイルス感染症 診療の手引き6.1版より)

モルヌピラビル(ラゲブリオ®)

添付文書はこちら

軽症者に用いられる経口(飲み薬)の治療薬です。

作用機序は、モルヌピラビルはプロドラッグであり、NHCに代謝され細胞内に取り込まれた後、活性型であるNHC-TPにリン酸化される。NHC-TPがウイルス由来RNA依存性RNAポリメラーゼによりウイルスRNAに取り込まれた結果、ウイルスゲノムのエラー頻度が増加し、ウイルスの増殖が阻害されます。

とまあ、要するにウイルスの増殖を阻害する作用を持っているということです。

適応患者は

酸素投与を有しない(軽症・中等症Ⅰ)で、18歳以上

重症化リスクを有する人

こちらは症状発現から6日以降での有効性が認められていないので、症状発現5日以内に投与が必要となります。

主な副反応は、下痢(3.1%)・悪心(2.3%)・めまい(1.3%)・頭痛(1.0%)です。

ラゲブリオ®は2022年1月現在、登録医療機関からの要請の上処方されます。

しかし、供給量が潤沢ではないため、インフルエンザの薬のように誰もが使える薬ではないことに注意が必要です。

おまけ

ニルマトレルビル・リトナビル(パクスロビド®)

ウイルスのプロテアーゼという酵素を阻害するという、モルヌピラビルとは異なる作用機序の飲み薬です。米国では2021年12月に緊急使用許可され、日本では2022年1月14日に承認申請が出されました。

重症化リスクのある18歳以上の軽症~中等症の患者に発症から5日以内に内服開始し、1日2回、5日間使用したところ28日間の入院や死亡のリスクを89%減らしたというデータがあるようです。

投与するにあたり、肝機能、腎機能、他の薬剤との相互作用に注意が必要な薬剤ですが、今後日本で使用することができるようになるかもしれません。

イベルメクチン(ストロメクトール®)

イベルメクチンはもともと腸管糞線虫症や疥癬の治療薬として承認されている薬です。

しかし、新型コロナウイルスの感染症の治療で、適応外使用として用いられている施設もあります。

MSD株式会社の米国本社では「規制当局によって承認された添付文書に記載されている用法・用量や適応症以外におけるイベルメクチンの安全性と有効性を支持するデータは、現時点では存在しないと当社は考えます(原文まま)」と発表しており、WHOでも「新型コロナ感染症に対する治療薬として使用することは臨床試験以外では推奨されない」と声明を発表しています。

医療機関によっては、臨床試験を行っているところもあるかとは思いますが・・・当面は適用外使用はせず、適正な使用のみに限っていただきたいと思っています。

まとめ

今回は軽症時の新型コロナウイルス感染症の治療薬について勉強したのでまとめました。

医療従事者としては、知っておかないといけない最新薬剤事情ですね。

しかし、どの薬も投与したら、100%重症化を防げるわけでも、隔離期間が短くなるわけでもないので・・・やはり、ワクチン接種や感染予防が重要であると思います。

では(@^^)/~~~

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