生薬・漢方薬基礎⑦

医療・薬

今回は生薬の組み合わせ(配合原則)について勉強します!!

漢方薬は一部を除き、それぞれ異なる性質や味をもつ複数の生薬でできています。

西洋医学でも数種類の薬剤を組み合わせて投与することはありますが、それと同様に漢方でも症状の変化に応じて必要な生薬を加減することで治療されてきました。

ただし、西洋医学と異なる点として、漢方薬の薬効は構成されている生薬の薬効の単なる総和ではないのです。

どういうこと??

生薬の組み合わせにより、ある生薬の薬効が増強される、もしくは毒性が抑制されるなどして薬効が大きく変化することがあります。

では、生薬の配合原則について学んでいこうと思います。

君臣佐使(くんじんさじ)

一つの漢方処方に含まれる生薬を重要度に応じて分類するものです。

ほとんどの処方はこの君臣佐使に従って組み合わされています。

例として麻黄湯を考えます。

麻黄湯の構成生薬は、麻黄、桂皮、杏仁、甘草です。

この中で

君薬は麻黄

臣薬は桂枝

佐薬は杏仁

使薬は甘草

です。

処方によっては、君薬が複数ある場合や臣薬、佐薬、使薬のどれかが欠けている場合もあります。

すべての処方に君臣佐使すべてが存在しているわけではありません。

七情(しちじょう)

生薬の配合原則のひとつです。

生薬を配合する際の7つの異なった作用で相互作用のようなもののことです。

  • 単行(たんこう)
  • 相須(そうす)
  • 相使(そうし)
  • 相畏(そうい)
  • 相殺(そうさい・そうさつ)
  • 相悪(そうお)
  • 相反(そうはん)

単行(たんこう)

一つの生薬が単独で使われるものです。

甘草のみの処方である甘草湯などが該当します。

相須(そうす)

2種類の生薬が互いにその薬効を高め合うものです。

石膏と知母などがこれに該当します。

相使(そうし)

1種類の生薬がもう1種類の生薬の作用によりその薬効を高めるものです。

黄芩と大黄などがこれにあたります。

相畏(そうい)

1種類の生薬がもう1種類の生薬の毒性を弱めるものです。

生姜と半夏がこれにあたります。

相殺(そうさい・そうさつ)

2種類の生薬が互いにその毒性を弱めるものです。

防風と附子がこれにあたります。

相悪(そうお)

1種類の生薬がもう1種類の生薬の薬効を牽制するものです。

生薬と黄芩がこれに該当します。

相反(そうはん)

2種類の生薬を組み合わせることにより、副作用や毒性がもたらされるものです。

附子と半夏がこれにあたります。


生薬間の異なった作用は複数の処方を組み合わせて使う場合や、処方に生薬を加減する場合には注意する必要があることから、ここの内容はよく理解する必要があるようです。

なお、七情という言葉は、「喜・怒・憂・思・悲・怖・驚」の7つの感情変化を表す場合もあるとのことです。

よく組み合わされる生薬について

生薬には非常に相性のいい組み合わせが存在するようです。

そのような組み合わせは漢方処方を構成する際にセットになって配合されている場合が多くみられます。

ここからは、一緒に配合されることが多い代表的な生薬の組み合わせについて勉強していきましょう!!

人参と黄耆

両者とも気の不足を補う作用をもっています。

この2つを組み合わせて、気の不足により起こる食欲不振や疲労倦怠感などに使われます。

人参と黄耆を含む処方群=参耆剤

⇒補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯など

甘草と生姜、大棗

3つとも消化機能を亢進する働きがあります。

胃腸を刺激する生薬が処方の中に入っている場合にはその作用を緩和する働きも持っています。

処方:四君子湯、六君子湯、桂枝湯、柴胡桂枝湯など

当帰と川芎

当帰:血の不足を補う補血薬

川芎:血を巡らせる活血薬

この2つは協力して月経不順やめまいなど血の不足に伴う症状に用いられます。

処方:四物湯、当帰芍薬散、温清飲(うんせいいん)など

半夏と陳皮

この2つはどちらも気をめぐらせ、体内の余分な水分を取り除く働きがあります。

悪心嘔吐などで胃腸機能の低下に伴う様々な症状に用いられる組み合わせです。

処方:六君子湯、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)、釣藤散など

柴胡と黄芩

柴胡:気を巡らし、体内の熱を冷ます作用

黄芩:体内の熱を冷ます作用

この2つを組み合わせることで、解熱・消炎作用を高め、特に胸脇苦満と呼ばれる胸からわきにかけて重苦しく張った状態に使われます。

処方群=柴胡剤

⇒小柴胡湯、柴胡桂枝湯、柴胡加竜骨牡蛎湯など

なお、柴胡剤という言葉は、広い意味で柴胡を含む処方群を指すこともあります。

黄芩と黄連

どちらも体内の熱を冷まして、みぞおちのつかえを取り除く作用があります。

処方:黄連解毒湯、温清飲、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)など

麻黄と桂皮

強い発汗作用があり、悪寒や関節痛、汗が出ないときに使われます。

処方:麻黄湯、葛根湯、小青竜湯など

麻黄と杏仁

どちらも強い鎮咳作用をもっています。

処方:麻杏甘石湯、五虎湯(ごことう)など

大黄と芒硝

代表的な瀉下薬です。

積極的に排便させることにより、体の中にたまった邪気を取り除く作用があります。

処方:桃核承気湯、調胃承気湯(ちょういじょうきとう)、大黄牡丹皮湯など

茯苓と沢瀉

ともに体内の余分な水を排出する利水薬です。

むくみや尿量減少などに使われます。

処方:五苓散、柴苓湯、猪苓湯など

生薬、漢方を学ぶ上で参考となるサイト

ツムラ漢方(医療関係者向けサイト)


まだまだ、生薬・漢方の基礎知識はたくさんあるので、次は漢方薬の方の基礎知識を勉強していこうと思います。

では(@^^)/~~~

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