肝硬変で使うお薬について(非代償期中心)

医療・薬

今回も勉強してきたことのメモ的な記事です。

肝硬変に使用するお薬についてまとめたいと思います。

分類としては

  • 肝機能改善薬
  • 肝硬変(対症療法)に使う薬
  • 分岐鎖アミノ酸製剤(BCAA)の必要性について

この3つをまとめました。

肝機能改善薬

ウルソデオキシコール酸(ウルソ)

ウルソデオキシコール酸とは?

もともと肝臓から作られる「胆汁(胆汁酸)」の成分の一つ。

効能効果

  • 胆汁内のウルソデオキシコール酸の比率を上げると肝機能(ALT、AST)が改善する(発がん抑制効果あり)
  • 利胆作用により胆汁酸の排泄を良くする。
  • 免疫調整作用

副作用

  • 軟便
  • 下痢
  • 吐き気
  • 胸やけ

など(100人に2~3人程度の頻度)

グリチルリチン(グリチロン、強力ミノファーゲン)

グリチルリチンとは?

漢方生薬の甘草(カンゾウ:マメ科)から抽出された成分。

効能効果

肝臓の炎症を抑える肝庇護薬。

ステロイドの分解を防ぎ、その抗炎症作用を強める。

副作用

アルドステロン様作用(血液中のカリウム減少 ⇒ 浮腫・高血圧)

肝硬変(対処療法)に使用する薬

胃や腸の粘膜を保護する(静脈瘤の破裂防止)

H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬(PPI)など

胃酸やペプチン(消化酵素)の分泌を抑える薬。

H2ブロッカー:ファモチジン(ガスター)など

PPI:オメプラゾール(オメプラール)、ランソプラゾール(タケプロン)、ラベプラゾール(パリエット)、エソメプラゾール(ネキシウム)など

なんで必要なの?

肝硬変が進行すると、門脈圧が高まり、その上流にある胃や腸で血流のうっ滞が起こります。

胃粘膜や腸の粘膜が赤く腫れ潰瘍となったり、時に出血がみられることもあります。

H2ブロッカーやPPIを服用することで胃酸の分泌を抑え、胃や腸の粘膜を保護し、潰瘍を治療して静脈瘤が破れることを予防することができます。

浮腫(むくみ)・腹水(おなかに水がたまる)を軽減する

利尿薬

主にスピロノラクトン(アルダクトン)やフロセミド(ラシックス)。

尿量を増やして、水分を体外に排出する薬です。

なぜ必要?

腹水発症時には副腎皮質ホルモンであるアルドステロンの分泌がこうしんしているため、抗アルドステロン薬のスピロノラクトンを投与して、アルドステロンの作用を阻害する必要があります。

よって、スピロノラクトンが第一選択薬です。

スピロノラクトン単独では十分な効果が得られない場合には、利尿効果が強いフロセミドを併用することがあります。

一般に併用する場合にはスピロノラクトン:フロセミド=2.5:1の割合で投与します。

連用する場合には電解質の以上に注意し、定期的に検査が必要です。

アミノバクト、リーバクト、アミノレバンEN

アルブミンの原料であるアミノ酸の薬です。

血液中のアルブミン濃度が3.5g/dL以下の時に投与されます。

なぜ必要?

アルブミンの働きには血管内に水を引き込む働きがあります。

肝硬変では肝臓でのアルブミン合成が減少することで血中アルブミンが減少します。そうすると、血中に水分を保持できなくなり、その分の水分は組織へ移行し、浮腫や腹水が増悪します。

よって、アルブミンを作るアミノ酸を補うことで、アルブミンの合成を助け、血中アルブミンを増やす働きをします。

アルブミン(点滴)

血中のアルブミン濃度が2.5g/dL以下の場合にアルブミン自身を補給します。

アルブミンの働きについて

  • 脂肪酸、ホルモン、薬物など様々な物質を運搬します。
  • 血管内の水分保持作用:血管内に水分を取り込み、水分が血管外に漏れ出ることを防ぎます。

体内のアンモニアを減らす薬

なぜアンモニアを減らす必要がある?

体内にアンモニアが増えることで、肝性脳症が発症し、意識消失など重篤な状態になる危険があるため、定期的に血中アンモニア濃度を測定し、適宜アンモニアを減らす作用のある薬剤を投与する必要があります。

ラクツロース、ラクチトール(ポルトラック)

作用

乳酸菌を増やして腸管内を酸性に変えることで、悪玉のアンモニア産生菌の発育を抑制します。

腸管内の水分を増やして便を柔らかくします。また、乳酸菌により分解されて乳酸や酢酸が産生され、その刺激で腸運動が促進することで便痛がよくなります。
⇒その結果、アンモニアの吸収を抑制します。

便秘は血中アンモニアを増やしてしまいます。

1日2~3回の軟便になるように薬剤の用量を調節します。

カナマイシン、ポリミキシンB硫酸塩

体内にほとんど吸収されない抗菌薬です。

作用

腸管で、アンモニア産生能の高い菌種である嫌気性菌の増殖を抑制する作用があります。

副作用
  • 下痢
  • 腎障害
  • 聴覚障害(カナマイシン)

肝性糖尿病の治療

なぜ、肝硬変で糖尿病??

肝硬変では肝実質細胞の減少によりグリコーゲンの合成や糖新生の障害、門脈ー大循環短経路の形成などによる肝臓のインスリンクリアランスが低下し、ブドウ糖が肝臓で代謝を受けずに直接抹消に流れ込んでしまうことが原因となり、食後高血糖をもたらしてしまう耐糖能低下が起こります。

肝性糖尿病の特徴

  • 食後高血糖
  • 空腹時低血糖(早朝低血糖)

食後高血糖はインスリンの過剰な分泌を招き、やがてインスリンを分泌する膵臓が疲弊して、インスリンの分泌が低下していきます。

そうすると、インスリンを外から補う(自己注射)が必要となります。

飲み薬で治療できないの?

経口の糖尿病薬は肝臓で代謝される薬剤も多く、肝臓に負担をかけてしまうことから使いにくいです。また、浮腫(むくみ)の副作用のある薬(ピオグリダゾン)もあり、肝硬変の合併症を悪化する恐れもあります。

分岐鎖アミノ酸製剤(BCAA)の必要性について

肝硬変の病態と栄養状態について

肝硬変は

高アンモニア血症 ⇒ 肝性脳症 ⇒ 低たんぱく食 ⇒ アルブミンが低下する ⇒ 栄養状態の悪化 ⇒ 高たんぱく食をとる ⇒ 高アンモニア血症

こういう悪循環が生まれてしまいます。

アミノ酸代謝とアンモニア

正常な肝臓の場合は、アンモニアは肝臓で代謝され、尿素となり排泄されます。

肝障害のある肝臓の場合、アンモニアが代謝されず、高アンモニア血症となります。

ここで、BCAAを投与することで、筋肉でのグルタミン合成にアンモニアを利用してくれるため、血中のアンモニアが減少します。(筋肉でアンモニアを解毒)

分岐鎖アミノ酸(BCAA)とは

バリン・ロイシン・イソロイシン

必須アミノ酸ですので、自分の体で生成することはできません。

BCAAの役割

筋肉でアンモニアを無毒化

筋肉でエネルギー源となる

肝臓でたんぱくを合成する材料となる

肝硬変ではBCAAの利用が高まることで、体内のBCAAが減ってしまいます。

薬剤

  • BCAAのみの製剤:リーバクト、アミノバクト
    ⇒食事摂取十分(エネルギー摂取十分)の場合
  • BCAAを含む製剤:アミノレバンEN(不足しやすい糖質、脂質、ミネラル、ビタミンも含有している)
    食事摂取が不十分(エネルギー摂取不十分)の場合

⇒非代償性肝硬変患者さんの体内で不足している栄養を補うとともに、BCAAを補充して栄養代謝機能の改善を図ります。

食事の摂取量の減少や栄養バランスの偏りがないかどうか、栄養士さんによる栄養摂取状態の把握が必要です。病院薬剤師の場合にはチーム医療で栄養士さんとかかわる必要があります。

就寝前にアミノレバンENはなぜ?

肝臓の機能が悪くなると、肝臓に栄養を十分に貯えておくことができなくなり、エネルギーの供給不足(飢餓状態)になりがちです。

特に、食事の間隔が長くなる夕食から朝食までの間は、エネルギーが不足しがちです。

そして、早朝に疲労感やこむら返り(足の筋肉がつって痛くなる)ことがあります。(低血糖になる恐れもあります)

これを予防するために、就寝前に消化の良い200KcaL程度の夜食やBCAA製剤のアミノレバンENを1袋とることで症状が改善するといわれています。

ただし、1日に摂る総カロリーを超えないようにする必要はありますが・・・

よって、就寝前のアミノレバンには、夜食兼BCAAの補給の意味があるのです。

最後に

肝硬変(非代償期中心)で使用する薬剤には

  • 肝機能改善薬
  • 肝硬変(対症療法)に使う薬
  • 分岐鎖アミノ酸製剤(BCAA)

があります。


肝硬変患者は、

  • 食後高血糖
  • 空腹時低血糖(早朝低血糖)

が起こることがあります。

よって、糖尿病薬が必要となるケースがあります。


夜間から早朝での低血糖が起こるリスクがあること、体内のBCAAが減少してくるため、

アミノレバンEN(BCAA+糖質・脂質・ビタミン・ミネラル)を夜食の代わりに就寝前に服用することがあります。


では(@^^)/~~~

コメント